業種は無関係。「経営のやり方」が重要です。

〈ダイジェスト〉

新聞が減ってもお客が増える新聞販売店

柳原新聞店_配達
新聞の発行部数が減っています。購読世帯が減っているからです。リーマンショック前の平成19年(2007年)は、朝刊と夕刊とのセット部数が全国で約1640万を記録していました。
日本新聞協会が発表している数字ですから、増減の傾向を知るには信用できるデータです。
5年後の平成24年(2012年)になると、このセット部数が1640万から約1240万へと400万も減少しています。約25パーセントの減少です。

一般紙、スポーツ紙といった種類別に見ても減少。朝刊と夕刊をそれぞれ見ると、夕刊単独の部数が144万から105万へと、やはり27パーセント近くも減っています。
「1世帯あたり部数」も、現状をわかりやすく伝えてくれます。平成19年は1世帯あたりの部数が1.01でした。
 ところが5年後の平成24年は1世帯あたり0.88。日本の世帯数は増えていますが、新聞は反比例して減っているという状況です。

柳原新聞店_アンケート
静岡県浜松市の柳原新聞店も、新聞を購読する世帯が減りました。平成19年度から平成24年度までの5年間に、世帯数にして5パーセント近くが減ったといいます。
国内全体では25パーセントも新聞が少なくなるなか、5パーセントの減少にとどまっているのは、新聞購読の継続率が高いことを示しています。

日本には新聞社が90数社あると言われていますが、同じ5年間で総売上高は3000億円以上も少なくなりました。
柳原新聞店も売上は減りましたが、それでも10億円を超える売上は、人口80万人の浜松市という静岡県西部地区では、一番規模の大きい販売店に位置しています。

売上が減少した大きな原因は、折込部門の落ち込みです。折込の売上は、平成19年度からの5年間で2割以上も減りました。
総売上がさほど変わらないのは、その他の売上が、同じ5年間で300パーセントの伸びを記録しているからです。

柳原新聞店_ファーブル倶楽部-和久屋
柳原一貴社長は、「新聞以外のお客さまが増えているので、さほど心配していません」と言います。
新聞以外のお客とは、野菜の宅配を楽しみにしている『ファーブル倶楽部』の会員です。

さらに、弁当の宅配事業でもお客の数を増やしています。
新聞販売店なのに野菜や弁当の配達? 本業以外の事業では? と疑問に思う人がいるかもしれません。
新聞販売店は新聞を正しく、早く配達し、新聞購読料を売り上げることが使命。そうとらえると、柳原新聞店は本業を逸脱しています。

柳原社長の考え方は異なります。
「新聞販売店だから新聞を配達することだけが仕事ではありません。地域の住民の暮らしに役立つこと、喜んでいただけること、住民の暮らしを知っているからこそできることを続ける。それが私たちの仕事です」

全国的に新聞の購読が加速度をつけて減少するなか、柳原新聞店はなぜ、読者の減少を最小限に抑えることができるのか。
購読者の減少がそのままお客の減少を意味する新聞店において、柳原新聞店はなぜ、お客を増やすことができるのか。
そこを知りたくて取材し、レポートとしてまとめたのが「お客が増える! No.62」です。

ニュース、情報、知識は、さまざまな方法で都合のいいときに、望む方法で手に入れることができます。
しかし、柳原新聞店のスタッフから日々の安心や喜び、しあわせを提供してもらうには、柳原新聞店のスタッフとお付き合いをするしか、ほかに方法はありません。
取材すると、そのお客と接する接点が多いことがわかります。
そこが、同社のお客が増える最大の理由であることを教えてくれる事例です。
 


>>トップページに戻る